公益財団法人石井十次顕彰会(理事長・萱嶋稔)は、第33回石井十次賞に、社会福祉法人慈愛園(熊本市)の運営などを通し児童福祉や人権問題に関わってきた潮谷愛一・義子夫妻を選定。高鍋町のたかしんホールで2024年4月12日(金)13時30分から贈呈式を行います。

 潮谷愛一(よしかず)さんは、モード・パウラス宣教師が1919(大正8)年に設立した慈愛園で、運営を引き継いだ父・総一郎さん母・千鶴子さんのもと、ハンセン病患者や結核児童、戦災孤児らと生活を共にし、中学生の時、福祉の道に入ることを決意。長じて日本社会事業大学に入学し、卒業後は児童養護施設別府平和園に就職しました。そして、アメリカ・ウィッテンバーグ大学や情緒障がい児施設で1年間研修を受けて帰国。1972(昭和47)年、福祉教育に力を入れる尚絅短期大学の助教授に就任します。この時代、母子健康手帳副読本の「おんぶ、抱っこ」の考えが誤りであると厚生省(当時)に直訴。改訂につなげ、日本の育児を大きく変えました。

 義子さんは佐賀県生まれ。佐賀高等学校から日本社会事業大学に進学し卒業後、佐賀県庁に社会福祉主事として入庁。1964(昭和39)年には大分県社会福祉主事に採用されます。同年、愛一さんと結婚。1972(昭和47)年からは慈愛園乳児ホームに勤務し、1984(昭和59)年、総一郎さんから慈愛園子供ホームを愛一さんが、同乳児ホームを義子さんが承継しました。

 ホーム運営に力を注ぐ傍ら、愛一さんは九州ルーテル学院大学の教授に就任、義子さんは熊本県知事に当選し、夫妻共ども社会的弱者の人権・福祉を重んじた活動に取り組みました。

 その後、愛一さんは熊本市社会福祉協議会会長などを歴任。現在は慈愛園運営から退き、同園の福祉相談員として活動する一方、後進に向けた著作執筆に力を入れています。
 義子さんは知事を退任後、長崎国際大学学長、日本社会事業大学理事長、慈愛園理事長、さらに石井十次賞選考委員長を歴任。現在は恩師財団済生会会長として活動しています。

 石井十次顕彰会は、人権を根幹にすえて福祉促進に貢献したこれら潮谷夫妻の功績は石井十次と志を同じくするものとして石井十次賞贈呈を決定しました。
 
愛一さんは「母子手帳の誤りを正し、日本が間違った方向に行くのを止めたことが評価されたと思っています」、義子さんは「愛一さんを妻として支えるのではなく、お互い認め合って福祉や人権に取り組んできたことが受賞につながったのでしょう」とよろこびを語っています。