公益財団法人石井十次顕彰会(理事長・萱嶋稔)は第31回石井十次賞に映画監督の是枝裕和氏を選定しました。

 是枝裕和氏は1962年、東京都練馬区に生まれ、長じて早稲田大学第一文学部文芸科に入学。卒業後、株式会社テレビマンユニオンに入社し、テレビドキュメンタリー番組を手がけるようになります。そして1991年、生活保護を打ち切られた難病の女性の自死と水俣病和解訴訟に尽力した厚生省官僚の自死の背景にある福祉問題を取り上げた『しかし… 福祉切り捨ての時代に』を制作し、優秀な番組を顕彰するギャラクシー賞を受賞。ネグレクトという言葉がまだ知られていない2004年には巣鴨子供置き去り事件から着想を得て自ら脚本・監督・編集に携わった『誰も知らない』で社会に大きな衝撃を与え、第57回カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞、シカゴ国際映画祭で「金のプラーク賞」、フランダース国際映画祭でグランプリなどを受賞しました。

 2018年には脚本・監督・編集を務めた『万引き家族』を発表。社会の片隅で暮らす弱者たちを通して家族の在り方を問い、カンヌ国際映画祭では最高賞となる「パルム・ドール」に輝いたのをはじめ、国内外で数多くの映画賞を受賞しています。

 また、次回作として韓国の赤ちゃんポストをめぐる人間模様を描いた『ブローカー(仮)』が公開予定になっており、早くも話題になっていますが、石井十次顕彰会はこうした弱い立場の人々に眼差しを向け、子どもの人権を社会に問う映画制作は石井十次の精神にふさしいと考え、石井十次賞の贈呈を決定しました。

 是枝監督は「新作『ブローカー(仮)』の準備をしていた2016年頃、熊本の赤ちゃんポストのことを調べていて、石井十次さんの存在を知りました。今回、石井十次賞の話を伺った時、やはり福祉や教育の現場で長年汗を流してきた方が受けるべき賞だとは思ったのですが、これまでの僕の作品がどこかで十次さんにつながっているかと評価されたのかもしれないと考え、お受けすることにしました」と語っています。