公益財団法人石井十次顕彰会(理事長・萱嶋稔)は、第27回石井十次賞に埼玉県大里郡寄居町の社会福祉法人康保会玉淀園を選定。高鍋町のたかしんホール(高鍋町中央公民館)で4月10日(火)贈呈式をおこないました。

 社会福祉法人康保会(こうほかい)玉淀園(たまよどえん)は昭和22年、埼玉県西部の大里郡寄居町に設立。日本の乳児院の先駆けとなった施設です。乳児院とは昭和23年の児童福祉法施行のもと、家族のさまざまな事情から家庭で育てられなくなった乳幼児を小学校就学前まで預かり、家族に代わって養育する都道府県の認可施設で、現在、全国に140か所あり、3,000名を超える乳幼児たちが育てられています。

 玉淀園を運営する康保会の歴史は古く、大正9年、東京都台東区で保育と医療の両面で浮浪児の保護・養護を開始。以後、98年の歴史を数えますが、この間、同区に3つの保育所も開設し、児童福祉に取り組んでこられました。

 その歴史を語る上で特筆すべき人物が康保会第2代理事長の故・遠藤省三氏です。遠藤氏が玉淀園園長に就任した当時は食べ物が容易に手に入らない時代。食料や牛乳を求めて付近の農家や酪農家を訪ねる日々でしたが、次々に入ってくる子どもたちは栄養失調状態。翌日には命を落とす子も多数いました。しかし墓地を貸してくれる寺はなく、墓探しにも苦労されたといいます。また、全国乳児福祉協会を立ち上げ、初代会長となって乳児の福祉に努められました。

 こうした働きがあって現在の乳児院があるのですが、石井十次顕彰会は日本でも早期の乳児院を開設し開所以来3,000名を超える乳幼児を養育し児童福祉向上に尽力してきたこと、全国の児童福祉推進に中心として関わってきたこと、地域の子育て支援事業や里親委託推進に取り組んできたことを評価し、乳児院単独としては初めてとなる石井十次賞贈呈を決定しました。

 現在、同園の施設長(園長)を務める柴崎順三氏は「児童福祉に携わる者として石井十次賞ほど、うれしい賞はない。遠藤省三ら諸先輩の苦労も報われたことと思います。今後も児童福祉発展のために力を尽くしていきます」と喜びを語っておられました。