公益財団法人石井十次顕彰会(理事長・萱嶋稔)は、第28回石井十次賞に神奈川県横須賀市の社会福祉法人横須賀基督教社会館会長の阿部志郎氏を選定。高鍋町のたかしんホール(高鍋町中央公民館)で4月10日(水)贈呈式をおこないました。
阿部志郎さんは大正15年、東京生まれ。第8代青山学院長だった父のもと、13歳の時に受洗。東京商科大学(現・一橋大学)在学中の昭和23年、ハンセン病患者を献身的に世話していた看護師・井深八重さんの姿に感銘を受け、社会福祉の道に入る決意をします。翌年、同大を卒業し明治学院に奉職。昭和25年にはアメリカ・ニューヨーク州のユニオン神学大学で倫理学を学ぶため留学しますが、この時代にエベレット・トムソンさんと出会います。
氏は終戦翌年の昭和21年、横須賀基督教社会館を開設。初代館長として児童のみならず高齢者も視野に入れた社会福祉に尽力しました。そんな人物との出会いは、阿部さんの人生を決定づけ、昭和32年、氏に請われて2代目館長に就任することになります。以後、「肢体不自由児こそ情緒的・機能的に特別な訓練が必要だ」として、肢体不自由児保育にわが国でも最初期に取り組むと共に公立施設設立に奔走し開所を実現させたほか、昭和34年には横須賀市で初めて乳児保育を開始。同38年には学童保育に取り組みました。
また、老人への給食サービスを早期に始めたほか、後年には認知症や障害者のデイサービスをはじめ、多機能な福祉複合施設を設置。児童と高齢者や障害者との交流を深める一方、近年は戦争・紛争による世界的な孤児問題に取り組むべく「国連世界孤児の日」の制定に中心として活動しています。
石井十次顕彰会は、こうした児童の健全育成に長期にわたり先導的に携わってきた実績を評価し、石井十次賞贈呈を決定しました。
阿部さんは「ソーシャルワーカーにとって石井十次は理想像。妻の祖父が十次のもとで奉仕活動していたという不思議な縁もあります。こんな名誉ある賞を頂き恐縮していますが、十次の精神を次世代に伝えていくべく尽力したいと思っています」と喜びを語っています。